富士フイルムのダビングサービスで残す、未来に繋がる宝物

映画監督・プロデューサー 三好大輔

富士フイルムのダビングサービスで残す、未来に繋がる宝物

未来に繋がる宝物

映画監督・プロデューサー 三好大輔

昭和四十年、一般家庭で映像を記録できるように開発されたシングルエイトは、子育て中の母親でも片手で撮影できる手軽さが評判になり、瞬く間に日本中に流行しました。ホームムービーの代名詞となった8mmフィルムは、昭和五十年代半ば、ビデオの登場によりその座を譲りますが、根強いファンに支えられ平成二十一年までフィルムの販売は続きました。
かつて、映写機で襖などに投影して楽しんでいたフィルムの多くは、押し入れの中に仕舞われたままです。
撮影から半世紀ほど経った令和の今、改めてその価値が見直されてきています。そこに記録されているのは教科書に載ることの無い市井の人々の小さな暮らしです。結婚式や運動会、地域のお祭りや七五三、誕生日会など、二度と撮ることのできない世界に一本だけのフィルムです。
物は無くても豊かだった時代、家族が支え合い、地域が寄り添いながら暮らしていました。カメラを撮る人の眼差しの向こう側には、底抜けに明るい笑顔が溢れています。屈託のない笑顔に触れるだけで、懐かしさが込み上げてきます。
8mmフィルムは未来へ繋がる宝物です。貴重な記録を残すのは今しかありません。

寄稿 三好大輔(映画監督・プロデューサー)

三好大輔

1972年岐阜生まれ東京育ち。日本大学芸術学部卒。音楽専門の映像制作会社、広告制作会社勤務を経て2005年に独立。CM・MV・ドキュメンタリーなどを手がける。2008年より東京藝術大学美術学部デザイン科講師。2009年、市民が記録した8mmフィルムを発掘・収集し、地域に根ざした映画づくりを始める。2011年、東日本大震災を機に安曇野に移住。2015年 株式会社アルプスピクチャーズ設立。昭和の8mmを掘り起こし多世代の市民と共創する映画作りを「地域映画」と名付け、全国に活動を広める。2020年 信州松本の築150年の古民家に拠点を移し各地でプロジェクトを行う。