岡野弥生 メイン

「WALL DECOR journal」Vol.5は、艶っぽさとユーモアを投影した、粋な土産物ブランド「新吉原」を主宰す

る岡野弥生さんにお話を聞きました。

2018年1月 取材・文:BAGN Inc 撮影:藤堂正寛 

ー岡野さんが土産物ブランド「新吉原」をはじめたきっかけを教えていただけますか?

私は吉原の生まれ育ちです。かつては吉原は花街として隆盛を極め、現在は日本一の特殊浴場街として知られています。吉原という地名は現存はしないのですが、エリアの通称として、その名前が残っています。街には歴史や文化がありましたが、今の若い世代の方にはそれほど知られておらず。その寂しさから「多少知ってもらえる機会を作りたいな」と思いが常にあり、「新吉原」を立ち上げる構想が浮かびました。私自身、以前は編集や広告の世界に身を置いていましたが、自分が好きなことを生業にしようと思ったときに、お土産物を作りたいというのがありまして。吉原を知ってもらうきっかけと土産物を組み合わせ、2014年に「新吉原」をはじめました。肩書きは「土産商」を名乗っています。

 

二俣公一Large

なるほど。一番最初に作った商品はなんですか?

フローティングペン(ペン軸に液体を含み、中に入っている絵柄が移動する)です。とにかくこれを作りたかった。海外のお土産でよく見られるもので、ペンを動かすと女性のヌードが露わになるもので知られていますが、和の艶っぽいデザインでやってみたかったんです。これは海外で生産しました。次は団扇。それからは日本の職人さんと協業している商品がメインになっています。

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ー旗艦店「岡野弥生商店」はいつオープンしたのですか?

2016年6月です。作業場がなくて困っていまして、その矢先に運良くこの物件に出会いまして。半分は店舗にしたいと思い、「岡野弥生商店」をオープンしました。ブランドをはじめるときも、お店をはじめるときも勢い任せです(笑)。早いもので今年で三年目を迎えます。

ーそれはトントン拍子でしたね。この立地ですと、海外からの観光客の方も多くいらっしゃるのではないですか?

最近増えてきましたね。近くにあるホテル「WIRED HOTEL」の土産物を「新吉原」で作ったこともあり、その流れでお店にいらっしゃるパターンも多いですね。モノとして商品に興味を持ってくださって。吉原の街に関して質問も受けることは少ないですが、中には興味があって聞いてくる方もいますね。

ーフラッとお店にいらして「なんでこんなに艶っぽい商品ばかりなんだ」と気にはなるでしょうね。国内外問わず、お客さまに人気の商品はなんですか?

手ぬぐいですね。私が土産物を作るにあたり、「重くならない、かさばらない」というのを心がけています。手ぬぐいは軽量なので特に人気ですね。

img-Kaori Mochida

ー岡野さんは商品開発をするにあたり、コンセプトやテーマを設けて掘り下げていく方ですか?それとも感覚的に作っていくほうですか?

圧倒的に感覚だけですね。マーケットを視野にしてものづくりをしたこともないですし。職人さんとお話していて、「あ、これ面白いな」「こんなのあったらいいな」と自分が感覚的に言ったことに対して、職人さんが呼応して、技術力で具現化してくださる感じですね。この手ぬぐいも私が赤い襦袢が好きで、そこから脚がチラッと見えていたらいいな、と思いつきが商品になった感じです。私はラッキーなことに、お付き合いのある職人さんたちが、みなさん優しい方ばかりで。職人さん同士もみなさん繋がっていて、版画屋さんから桶屋さん、桶屋さんから鼈甲屋さん…と数珠繋ぎで今に至る感じです。職人さんの中には「新吉原」のようなことをやってみたかったという方もいまして、でも艶加減の度合いが分からないと。だったら私の感覚でやってみたいことを一緒にやりたいと仰ってくださいました。私は一人でなんでもやってしまう方なので、親身に応援してくれるんだと思います。お店をオープンしてから協業していくのがより増えていきましたね。

ー職人さんにとって吉原という街のイメージは、みなさんそれぞれだと思いますが、岡野さんのクリエーションは、江戸と昭和のエッセンスがマッシュアップされていたり、どこか時代を横断しているのがたいへん面白いと思います。職人さんも岡野さんの現代的な感覚に魅了するのでしょうね。

確かにいつの時代なのか分からない感じになりますね。実際に遊郭や特殊浴場に関しても、人から聞いた話や資料でしか知ることができませんから、頭の中で想像が加速していく感じですね。膨らみ過ぎたら整える作業をしていくというか(笑)また職人さんが意見をくださることで制約ができるので、より商品化が現実味を帯びてくる感じです。これからは職人さんたちの展示もお店でできたらと思っています。2月16日-25日まで「結桶師 川又栄風」展として、桶屋さんの商品を展示販売しました。新たな世界観を作りたいなと思い、今回はお花と一緒に展示をしたんです。

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ー話は変わりますが、今回「WALL DECOR」を使っていただきまして、可愛い猫のパネルが3枚仕上がりました。こちらの猫の写真(度アップ)は臨場感が溢れて、なんだか虎の子供にも見えます(笑)。あと猫ちゃんの目に撮影している岡野さんが写り込んでいるのも微笑ましいですね。

この猫は一番の甘えん坊のムチリンダです。お釈迦さまを守った大蛇の名前から命名しました。もう一匹はアナン。白い猫はモッチという名前です。ムチリンダとアナンは里親サイトから譲渡しまして。モッチは祖母と暮らしていましたが、我が家で引き取ることになり、猫三匹と暮らすことになりました。我が家はみんな猫好きで、幼少期から身近な存在です。昔からなんか辛いことがあると、ひたすら猫を撫でてましたね。

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ー猫は気配だけでも癒してくれる、崇高な存在ですよね。岡野さんは写真がとてもお上手ですが、写真撮影がご趣味ですか?

いえいえ。中学時代に写真部ではありましたが、今回はスマートフォンのカメラで撮影しただけです。額装するにあたり、猫が持ってるキャラクターを表現したいなと。色も統一したくてモノクロで撮影しました。セットで並べるのもありかなと思いまして。こうしてパネルにしてみると、モッチは女の子なんですが、より女の子に見えてきます。これだけそれぞれの特徴が出ているので、作業場に飾っておけば、猫に触れていない寂しい時間を埋められるかもしれませんね(笑)




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ー出来上がったものをご覧になっていかがでしたか?

想像以上に綺麗で、繊細な部分まで表現してますね。「カジュアル」のパネルは、とても軽いし立てかけられるのもいいですよね。背面の穴(フックに引っ掛けるところ)もきちんと用意されていて、壁面に釘やフックを打つ時のガイドにもなるので親切です。今回は「カジュアル」だけでしたが、「ミュージアム」「ギャラリー」の仕様も気になります。店舗では写真展を何度か開催していまして、次回は「WALL DECOR」を使って展示してみるのも良いかなと思います。簡単にオーダーができ、しかもこのクオリティで仕上がってくるので、個人的には下町の街を撮影して飾りたいです。

 

 

Profile

Prof-kazumi-hirai

岡野弥生(yayoi okano)

東京・吉原生まれ。東京の観光地としても有名な浅草から少し離れた所にある吉原は今では特殊浴場街として有名だが、江戸時代は遊郭として様々な流行や文化を生み出し、歌舞伎や小説にも登場した歴史のある色街。そんな街で生まれ育ち、雑誌の編集者を経て、2014年に「吉原」をデザインに落とし込んだ土産物ブランド「新吉原」を立ち上げる。艶っぽい中にもどこかクスッと笑ってしまうようなデザインが多く、幅広い層から人気を集めている。2016年6月にギャラリー型スーベニアショップ「岡野弥生商店」をオープン、新吉原の全商品を取り扱う。

 

岡野弥生商店
www.shin-yoshiwara.com