二俣公一 メイン

「WALL DECOR journal」Vol.4は、デザイナーとして国内外で活躍する二俣公一さん。

仕事をする上で大切にしていることを、6枚の額装で表現しました。

 

2017年11月 取材・文:BAGN Inc 撮影:平川雄一郎 

ーこのたび額装した写真は、二俣さんが建築や空間を作り上げていく中で、協業している方たちとの関係性が垣間見えるものばかりですね。

はい。今回、お話をいただいて、写真を現像して飾るということをしばらくしてないな、と思いまして。そこで自分のスマートフォンの写真を改めて見返してみました。会社もしくは個人で関わった物件やプロダクトは、自社サイトや媒体などで世の中に出ていきますが それはほんの一部でしかなくて。時間でいうと出来上がるまでの時間の方が断然長い。であればその過程での出会いや舞台裏で印象深かったことを額装してみたいと思いました。この壁には施主の方々からいただいたお手紙やお礼状を虫ピンで飾っています。仕事の結果はもちろん大切ですが、僕はそれ以前のことを大切にしています。感謝の言葉や心のこもった言葉が綴られたものを常に目に届くところに置くことで、自分の仕事の根幹を可視化できるし、自分を鼓舞することにも繋がります。今回、「WALL DECOR」で額装して写真を飾ることは、手紙を飾ることと同様だと思い、写真を6枚選び、こうして同じ壁に集約させました。

 

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なるほど。このような思いを投影する写真はたくさんあるでしょうから、選ぶのもたいへんだったのではないでしょうか。

ですね。一番上の写真は2014年に竣工した熊本の「はけみや保育園」での工事風景。鳶職人さんが鉄骨を組んでいる様子ですね。この仕事は工期がタイトだったこともあり、きつい状況でしたが、関わるみなさんに助けられて。そんな中で見上げた時の職人さんがとても格好良くて撮影した一枚です。このように構造が立ち上がるのは、僕たちにとってすごく魅力的な絵です。建物が完成したら二度と見られないですから。5枚目の写真も同様ですね。こちらは瀬戸内海・豊島にある「海のレストラン」です。

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ー建築にとって強度を示す部分ですが、刹那的な光景ですよね?

解体するまで見られないでしょうし、だからこそこういう絵光景は飾っておきたいと思いました。二枚目は一緒に仕事をしている構造家を撮影したもので、鹿児島県最南端・与論島で設計した別荘の現場です。現場は真剣勝負そのものですが、ともに仕事をしているのがすごく楽しくて。彼もすごく嬉しそうな姿をしていて、思わずカメラを向けました。与論島の物件は思い出がいっぱいで…

ー印象的なエピソードをお聞かせいただけますか?

計画で1年、施工で1年半、計2年半費やした物件ですが、その間通うたびに「与論献奉(よろんけんぽう)」をするはめになりまして。与論献奉とは地元の方が客人をもてなす儀式なのですが、杯になみなみ黒糖焼酎が注がれ、ひと言あいさつを述べてから飲み干し、これを延々と、まわし飲みし続けるというものです。こうしてやっと島の方に心から迎えられるという。別荘の上棟式の時、関係者約30人が集められ、与論献奉となりまして。このときは相当飲みましたね。途中でグダグダになりました(笑)。行くたびに与論献奉でもてなしてくださったんですが、お酒に強い方ではないのですが、黒糖焼酎だからか、次の日に酔いが残らなくて助かります。職人さんたちもベロベロになりながらも、早朝から元気に現場に出てましたね。

ーそれはハードですが、貴重な体験でしたね。

三枚目も同じく与論島の現場です。管理事務所の光景ですが、地鎮祭の際に施主のお子さんが「安全第一」のメッセージを旗に添え、家族と工事現場の様子を絵に描いてくれて。これを見て関係者一同、グッときましたね。

img-Kaori Mochida

ー関わる方々と施主の方との関係性を象徴していますね。二俣さんは建築や空間を作るにあたり、 施主の方とどのようなやりとりをされるんですか?

僕たちのフィルターを通してデザインをすることと同時に、まずは施主がどのような方なのか、きちんと把握するようにしています。自分たちがどのように考えていくかもたしかに大事ですが、施主に馴染み寄り添える空間になっていることが大前提です。幸いにも我々の施主は自分の意思や考えがしっかりあり、求めているライフスタイルを明確に提示して下さるので、それを聞いて吸収し、それから仕事に入る感じですね。土地などの諸条件からだけではなく、施主がどのような人で、どのような空気感を醸し出しているか、それが一番大切だと思います。そのためには一見無駄かもしれないことでもたくさんヒアリングしますね。

ーなるほど。人間関係の構築から設計へとシフトされているんですね。それでは撮影された写真のお話に戻らせていただきますね。  4枚目は地鎮祭ですか?

そうですね。これは千葉の現場で、神主さんが地鎮祭の準備をしている姿です。神主さんが準備している様子が凛としていて美しく、ここは竹林を開墾した土地なのですが、今から神様が降りてくる、そんな感じに思えました。神がかっているといえば、最後の写真もそうです。約100年前の建物を改築した京都の物件です。蔵付きの木造家屋なのですが、その蔵に換気をするような小さな小窓があり、そこから光が差し込むところです。漆喰の壁は昔の技法で波打っているのですが、滑らかな壁と光によって一見抽象画のようにも見えて。その様子がとても美しくて思わず撮影しました。

二俣公一 イメージ
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ー撮影はいつもスマートフォンのみですか?

いえ。スマートフォンのカメラと富士フイルムのデジタルカメラ「X-T20」を愛用しています。もともと海外製のフィルムカメラとレンズを使っていたのですが、デジタルに移行するにあたり、そのレンズを生かせるカメラを探していました。その時に同じく富士フイルム「FinePixX100」を使用していましたので、それを使い慣れたこともあり、今はその海外製のレンズと「X-T20」を使っています。「X-T20」はアナログ感を含め、デザインもすごく良い。コンパクトなので移動の多い僕にはうってつけですし、モノクロ撮影の風合いが好みで、こちらで風景や人を撮影することも多いです。いつも持ち歩いてますね。

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ー二俣さん、最後になりますが「WALL DECOR」のサービスを使ってみていかがでしたか?

発色が良く、クオリティが高いと思います。さくっとオーダーできるのもいいですよね。 いつも物件が完成した際に、建物の前で施主のご家族を撮影して、メールで送ることが多いのですが、今度は「WALL DECOR」で額装して、プレゼントするのもありかなと思いました。写真を飾るってその時の気持ちに一瞬にして戻れるからいいですよね。

 

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Profile

Prof-kazumi-hirai

二俣公一(Koichi Futatsumata)

空間・プロダクトデザイナー

福岡と東京を拠点に空間設計を軸とする「ケース・リアル (CASE-REAL)」とプロダクトデザインに特化する「二俣スタジオ (KOICHI FUTATSUMATA STUDIO)」両主宰。

1998年より自身の活動を始め、国内外でインテリア・建築から家具・プロダクトに至るまで多岐に渡るデザインを手がける。

 

CASE-REAL
http://www.casereal.com

KOICHI FUTATSUMATA STUDIO
http://www.futatsumata.com