写真が生まれる場所を訪ねて
VISIT TO PHOTO LABORATORY
東京都のほぼ中心に位置し、豊かな自然に恵まれ数々の史跡が残る調布市。閑静な住宅地を抜けたエリアに、FUJIFILMのラボがある。広い敷地には、2棟の大きな工場が立ち、さまざまな樹木に囲まれた広場、従業員用の食堂が併設されている。フォト商材のほとんどがこのラボで組み立てられ、全国の顧客へと毎日届けられる。思い出がカタチになる場所。そして、そこで働く人々を訪ねた。
ものづくりの原点
重い金属の扉を開けると、遠くまで見渡せる広い空間が現れた。さまざまマシンが等間隔に並び、規則正しい音を刻んでいる。テキパキと作業を進めるスタッフの横には、ファイルやトレーで分別された商品たちが、次の工程を静かに待っている。機械だけでなく、人の目と両方で工程チェックを行う。それゆえ、「整理整頓」が合言葉になる。広い工場のなかで印象的だったのは、床の美しさだ。磨き上げられたような廊下を歩いていると、清々しい気持ちになってくる。数人もの清掃員と挨拶を交わした。彼らが毎日工場内を巡回しているからこそ、掃除が行き届いている。こうした環境は、ここ数年かけて整えられたと教えてもらった。働く人が自発的に考え、実践する。これからも手を加え、よりより場所を目指すのだそう。『働く人が心地良い場所へ』。しっかりしたものづくりの土台は、その環境にこそ現れているのだ。
クラフトから生まれる写真
ラボでの作業は、あらゆるところで人の手が介入する。各セクションごとに、専門の技術者が配置され、業務にあたっている。勤続20〜30年というベテランも多いそうだ。長年培ってきた技術の見せ所は、なんといってもプリンティング技術。最新のデジタル画像処理を用いながら、顧客の思いや意図を組みとりながら1枚1枚を丁寧に仕上げていく。フィルムからデジタルへとメディアは大きく変わったものの、必要とされるのは写真のクオリティを上げる技術なのだ。写真の壁掛け商材「WALL DECOR」は、具材のカットからパネルの組み立て、シート貼り、梱包作業までを行う。いくつもの道具を駆使し、黙々と細かい作業を進める所作は無駄がなく美しい。至る所から聞こえて来るのは、手作業の音だ。ここではラボというより、クラフトマンが集まってものづくりを行うアトリエという言葉が似合う。
想像以上、のために
ラボの責任者のひとり、田口さんは入社して22年目になる。街の写真家を経営していた父親の背中を見て育った。入社後は、さまざまな部署で経験を積んだ。自身の業務を、写真を活かす仕事と呼ぶ。「プリント後は、全工程に手作業が入ります。手間をかけたものが人から人へと渡って、ひとつの商品として世に出るんです。意地でも間違えたものは出せないですよね。確実に仕上げることが、FUJIFILMらしさに繋がっていると思います」。こうしたこだわりは、仕上がりが想像以上で感動したという顧客からの声が一番の励みになっていると、隣にいた同僚が言う。作り手たちをまとめる田口さんに、プロフェッショナルの理想像を尋ねてみた。難しい顔をして、少し時間が経った。「みんなを巻き込む柔軟性。そして、職人気質を両方持ち合わせた人じゃないですかね」。恥ずかしそうに笑みがこぼれた。