かけがえのない旅のキロクと心のキオク
たとえば、旅に出たいと思うのは、どんな時でしょうか。
ここではない場所へ行きたい。新しい何かを見たい。見知らぬ誰かと出会いたい……。
理由はそれぞれ。
そして出会った景色や感動も人それぞれだと思います。
旅人は世界中にいますが、旅の内容は一つとして同じものではないのです。
そして内容がどんなになるかなんて、当の旅人自身もわからなかったりする。
だから、旅って面白い。
ある時は砂漠の下で、ある時は雑踏の中で、ある時は伝統ある建物の前で、旅人は思うのです。
「ああ、この瞬間を切り取りたい。ずっと覚えていたい」と。
それを忘れないように、忘れたくないために
そうしてシャッターを切る。まるで拾った光を宝箱に閉じ込めるように、カメラにその瞬間を収める。
そして、日常に戻った時、それを忘れないように、忘れたくないために、カタチにする。
普通の生活の中で、あの時の写真を見て、ドキドキワクワクした心臓の高鳴りが、少しでも蘇ってくることがとても重要なのです。
もちろん、現実的には毎日の暮らしと旅の刺激はかけ離れた世界。
でも、写真という旅のキロクがその二つを繋げた時、物事へのやる気スイッチになることもある。
そして、新たな旅に出たいという指針にもなり得るのだから、なかなか素敵な役割を担ってくれるとは思いませんか?
あるいは、昔の旅の写真を引っ張り出してみるのも一つ。
空のネガフィルムをたくさんスーツケースに入れて、
カメラを首から下げて出かけた若かりし頃の旅の写真は、見るだけでもう泣けてくる程、何かの力を持っている。
今のように撮り直しが効かない、ちゃんと撮れたかチェックもできないからボケた写真も多かったけれど、でも、そのボケもまた大事な旅の記録でした。
当時のプリントの良さは大事に取っておきながら、それもまた、今という時代に合わせたカタチにしておくこともありかもしれませんね。
さあ、あなたの旅のキロク、心のキオクから、次はまたどんな旅に連れてってくれるんでしょうか?
せっかくだから、旅の思い出は飾ったり
Writing by 岡田季子 Photo by 藤堂正寛&岡田季子