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「WALL DECOR journal」Vol.9は、雑誌やイベントで食の楽しさを伝え、自宅でも教室をはじめた料理家の冷水さんをお迎えしました。

2018年6月 取材・文:BAGN Inc 撮影:藤堂正寛 

ー早速ですがご自身の写真を選んで、iphone で注文し、手元に届いたこれらの写真をみていかがですか?

ポスターとか欲しいものがあってもどう飾っていいかわからないし、写真展で額装の仕方をみてもなかなか真似ができそうにない。自分ではこういうことができないから、実際頼んでみて普段の写真が作品になったようで嬉しいですね。それと額装が綺麗です。この写真には、この規格が合いそうだなぁとか考えるのが楽しかった。家族写真とかも良さそうですね。

 

二俣公一Large

ーお子さんやペットの写真注文は多いです。今回冷水さんが選ばれた写真についてお聞かせください。

ざ・料理みたいなものは壁にかけると何か違うなぁと思ってセレクトしました。 逆にお尋ねすると、どれがお好きでしたか?

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ー第一印象でこの一枚(お魚の写真)でした。お料理自体の色合いと、魚同様に横に長い大きなサイズが気持ちいいです。

これは以前住んでいた鎌倉の家で撮ったものです。農家さんからいただいたお野菜と、鎌倉で購入した鯖だったと思います。小さい鯖一尾をグリルしたところに、お野菜のマリネをのせてドレッシングをかけたもの。雑誌の撮影用に作ったお料理で、自分で撮影したものです。グリルしたものにのせただけ。ミニトマトがのっているから、夏のお料理ですね。夏は色がとっても鮮やか。
あの一枚も鯖ですね。鯖を白ワインビネガーと白ワインで煮た冷製サラダ。それにブルーベリーの酸っぱいソースを添えたもの。冷製となると作ってすぐには食べられないですよね。ケータリングなどに向いています。前日に作っておけるし、現場でちょうど良い具合になっている。お客さんが来るとわかっている時も、前日に作っておけるので、「冷製」は便利です。便利なごはん、手の込んだごはん、その場で熱々で出したいものって分けておいたら慌てない。全て手が込んでいるコースだと毎度大変。食べる人もしんどいですよね。割烹とかコースにいくときに4番バッター級の人が次々に出て来ると、途中食べるのしんどくなってくるでしょ。

葡萄の写真は山梨に撮影に行ったときのスタジオに葡萄棚があってそれをおさえたものでした。おそらく熟しきったものだから、勝手に干しぶどうになっていた。美味しかったんですよ。 山梨の人って、庭に葡萄を張らす人がとても多い印象でした。
 左の写真はプラムを凍らしたものです。料理していなくて、ごめんなさい(笑)。農家さんにお願いしたら、すごい量で送られてくるときがあるから、凍らして保存しておいた、ある日の朝ごはんです。サラダにいれても美味しいですよ。いちじくなど、果物をサラダに加えるのはここ4〜5年でひろく知られるようになったかもしれませんね。お料理にムーブメントというのもあるみたい。ハーブも2〜3年前からですかね。それ自体はあったけれど、みんながハーブというものに馴染んできたんだと思います。

ー世の中のパクチーに対する勢いはすごかったですね。水害などの被害では元の状況に戻すまでに10年はかかると聞いたこともあります。

(パクチーを取り扱う)お店も増えて、農家さんどうしているんだろうと、その点は気になりました。去年は京都の農家さんが大雨で大被害にあいましたよね。一年育ててきたものが、一瞬にしてだめになってしまう。自然を相手にするって本当に大変なこと。農家さんは勉強できるのが1年に一回だけ。一度植えたら、来年はこうしようと手を打てるのが一年にほぼ一回だから、とてもすごい生業です。

ーお料理に映るような食材はいつもどのように調達されているのでしょう?

鎌倉の時にはスーパーやレンバイ(鎌倉市農協連即売所の通称)で買ったりもしていたけれど、日頃から知り合いの農家さんに尋ねて送ってもらったりすることが多いので、実はどこに住んでいても口にする食材は変わらないんです。宅配をしている農家さんに依頼することもあれば、畑を見に行って繋がりがもてた農家さんとの継続が多いです。

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ー料理教室のときにも、同じ様に素材を手配されているのでしょうか?

料理教室のときには、調達できないと困る材料を確実に手にするためにスーパーに出向いてますよ。イベントや友達が自宅に食べに来るときに、農家さんには頼みます。月4回を料理教室の時間に充てて、2ヶ月は同じメニューで各回異なる生徒さんを迎えて教えています。この自宅に引っ越してきてから始めた料理教室は、引っ越したら始めなきゃなぁという感じでキッチンを重視して探していました。定期収入!という現実的な理由で(笑)。それと、始まる前にはお皿をいく先々で購入していました。 (自宅内を見回して)ほら、見ての通りです。まだ、扉の奥にもたくさんあります。その時に何を使うかは目の前にあるものを掴んで、お料理をのせちゃいます。料理教室のときには取り皿として白い皿をよく使っていますかね。うつわは好きみたい。

img-Kaori Mochida

ーこのご自宅での料理教室は、生徒さんがお料理以外にも刺激を受けそうな環境です。

リフォームを検討されている生徒さんが、参考にと写真を撮られることもありましたね。 大家さんの旦那さんが外国の方で、この広いキッチンも外国で見かけそうなつくりですよね。

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ーわたしも以前、ご一緒させてもらった仕事がありました。冷水さんをお連れした土地で、どんな食材があるかを一緒にみてまわって、その食材からイベントの料理を仕込んでもらうという内容でした。素材を手にして、生産者の人にすごくいろいろと質問をされていたのが印象的でした。

素材を扱うときに、より気持ちが入ります。食べてもらう人にも伝えられますしね。作っている人と食べている人の間の人になるから、それをどう伝えるかを考えます。

ー手にする食材は変われど、毎日料理をされていますよね。

していますね。自分のものは作る暇がなくて、ほぼ試作を口にする毎日。14-5年はこの仕事をしていますが、不思議な仕事ですよね。

ー物事を伝える中間者として何か思うところはありますか?

イベントを企画したり、お店を持っていたら直に伝えやすいけれど、雑誌のときになるとそれが伝えれられないからもどかしさはあります。簡単にいうと「わかりやすいレシピをお願いします」と言われて、そこに満足できるほどの気持ちをのせることができない。生産者さんの気持ちを込めたレシピは作れないし、逆に生産者さんが作ったような食材をつかえない。それを雑誌で反映するのは少し難しい。

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ーなるほど、わかりやすいレシピというオーダーに対して、あまりに多い情報を加えることは避けたいと思うかもしれません。

最初は葛藤がありました。ちゃんとした食材を扱いたいなと思って。ただ、そうなるとちゃんとした野菜って、お塩をふるだけで美味しかったりするんです。それが雑誌では「塩をふるだけ!」とはなかなか言えないし(笑)、それを基本に考えにくい。料理するといっても雑誌の仕事は全く異なるものなのです。どちらも楽しくてやりがいのある仕事ではあります。雑誌のように料理を作って写真に残すという仕事も好きですし、間に入って物事を伝えるということも好きだから、一般家庭でもそういうことを知ったうえで楽しんでもらったほうがいいなと思っています。与えられた条件の中で伝えたい部分をどう伝えるか。そこが私の課題ですかね。

img-Ryo Takahashi

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ー外食もたまには?

ちょこちょこあります。行きたいお店に友達とでかけます。ごはんを食べると気持ちがほぐれますしね。自分は食べるのが好きで、みんなで食べるのも好きなんだなと思います。

 

img-Ryo Takahashi

ー味覚の幅を広げに旅に出ているんですね。

先週はイタリア、ラトビア、スウェーデンに15日間かけて行きました。本当はイタリアとスウェーデンだけの予定だったけれど、同じく料理家で一緒に出かけた人がラトビアの空気も吸いたいと言って、行こうよ!となりました。彼女は来年ラトビアに関与したお仕事でケータリングを頼まれているようなので、そのための視察だったようです。

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ー冷水さんの生み出す味は母譲りですか?

そうかもしれませんね。母は随分と薄味を好んでいました。西の醤油が甘くて、東が濃い。そういうのもあって、雑誌のレシピって難しいなぁと思います。塩もこだわりをもてば違いますしね。「暮らしの手帳」のお仕事に関わったときには、編集者側が校了前に試食をします。それで疑問が投げかけられて、チェックして、しっかり読者側にたっているなぁと。

ーほぼ毎日インスタグラムでお料理の写真を掲載していらっしゃいますよね。毎日美しくて、美味しそうなものばかり。料理をつくることと一緒で、撮るということも冷水さんにとって日頃の習慣なんですか。

夜ご飯は写真としてあまり綺麗にとれないから、主にお昼に撮ったものを中心にあげています。食べようという気持ちが先に走ってしまって、撮るのを忘れてしまうことはありますね(笑)。撮るということを意識してできるだけ毎日のお料理を記録するようにしています。よく撮れたもの、そうでないものは当たり前かもしれませんが天候に左右されますよね。夜に美味しそうに料理を撮ることは難しい。酒場でとったり、パーティーでとったりするのはそれはそれでいい雰囲気にはなるけれど、それは風景としてだから、お料理をメインで撮ることとは少し違う。

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ー少人数のために作る食事、大勢の人に作る食事で、それぞれどんな楽しみがありますか?

気分のスイッチが違うような気がします。2〜3人の時と、8人ぐらいのときと、それ以上は何人でも一緒。500人とかになるとまた違いがでてくるけれど。ご一緒した仕事では構えて行ったけれど、200人くらいでしたよね、思った以上に疲れはなかったです。手伝ってくれる人もいっぱいいましたし。もう少しアップアップになるかと思っていたけど(笑)。

ー手順を考えるというのがありますよね。品数から、美味しいタイミングでだせる時間の割り出しなど。

常にあたまは動いていますね。これとあれとあれは同時に切り出しておこうとか、あれを炒めている間に、こっちで仕込んでおこうとか。頭の中にずっとある。それを毎日、毎日。大人数に提供するときには、慣れたくないけれど、重なると慣れてしまいます。でも、味付けに集中できなくなってしまう。細かいところまでが難しくなってくるから、大人数に届けるためには、ここまで手を加えれば十分に美味しいというところで自分の中で許容の範囲で挑みます。2〜3人の友達だったら、ちょっとした塩の振り方でもやっぱりちゃんとしたいとかありますね。大人数になるとそうとも言っていられないですしね。そのときには、大皿で美味しい料理というのをまず最初に考えるから、大人数と少人数でそれぞれ提供するものに対してメニューが変わります。
生産者が目の前にいるイベントでは、その素材をどういかすかを考えるのは、その時まで何がくるかわからないからドキドキします。生産者と一度繋がると、そのあと取り寄せてつかうこともよくあります。取材やイベントの仕事は生産者さんと繋がれるから楽しいですね。

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Profile

Prof-kazumi-hirai

冷水 希三子(Kimiko Hiyamizu)

料理にまつわるコーディネート、スタイリング、レシピ制作を中心に、書籍、雑誌、広告などの仕事をしている。
著書に『さっと煮サラダ』など。 http://kimiko-hiyamizu.com/