富士フイルム 光学・電子映像事業部
電子映像グループマネージャー 上野 隆

≪プロフィール≫
1996年から2011年までプロ用写真フィルム、及びフィルムカメラのマーケティングを担当し、フィルムで写真を撮ることの楽しさ、魅力を伝える活動に従事。
富士フイルム主催写真教室講師やフォトギャラリーのキュレーターとしても活動。その後はFUJIFILMのデジタルカメラ、「Xシリーズ」の商品企画者として、X-Proシリーズ、X-Tシリーズ、GFXの商品企画を担当。
プライベートでは7歳からカメラを始めたほどの写真愛好家で、フォトマスター検定エキスパート。

~80年以上に渡って、色・映像を作ってきた会社ならではの色再現技術の高さを生かした商品開発~

「Xシリーズ」開発に至るまでの背景を教えていただけますか?

そもそも富士フイルムは、「FinePix」というブランドで主にコンパクトデジタルカメラを提供してきました。 しかし、やはり富士フイルムといえばフィルムメーカー。80年以上に渡って、色や映像を作ってきた会社ですので、コンパクトといえども色再現には高い評価をいただいておりました。

一方、一部のプロ写真家、ベテランアマチュアの方々からは、かなり早い時期から「この色を再現できて、よりクリエイティブな撮影の出来るプロ機材のような商品を是非出して欲しい」というリクエストを数多くいただいておりました。その声にお応えするために、富士フイルムとしては、先ずは他社一眼レフのボディを使用し、そこに富士フイルム独自のセンサーを搭載した「FinePix S1Pro」というカメラを開発しました。このシリーズは最終的に「FinePix S5Pro」というモデルにまで進化しました。

FinePix S1 Pro FinePix S5 Pro

しかしながら、いくら独自センサーを搭載し富士フイルムの色再現を実現させたとしても、レンズやマウントの規格、ボディ構造がデジタル専用ではないため、我々が目指す真の性能が出せないことが徐々に分ってきたのです。「フィルム時代の規格に囚われない新しい概念のカメラ」それを開発必要があると気付きました。そこに登場したのが、デジタルならではのカメラの構造体である「ミラーレス」というシステムです。
「このシステムを使えば、ボディ、レンズ、センサー等を全てを一から開発できる」我々はそう思いました。
これが「Xシリーズ」発想の原点となりました。

~全ての写真家ユーザーのニーズに応えられるシステムの完成~

「Xシリーズ」開発~現在に至るまで、どんな変化を経てきたのでしょうか?

一般の方には馴染みがあまりないかもしれませんが、富士フイルムはフィルム写真時代からプロ用の中判カメラや大判カメラ用レンズなどを積極的に商品化しており、多くのプロ写真家にご使用いただいておりました。それもあって、主にプロの方から、高画質・ハイエンドデジタルカメラに対する期待が非常に高かったという事実があります。そこで、2011年3月に、記念すべきXシリーズ第1号となる、APS-Cサイズセンサー搭載のレンズ固定式高級コンパクトカメラ「FUJIFILM X100」を発売しました。そして、さらにその1年後の2012年1月に富士フイルム初のレンズ交換式ミラーレスカメラ「FUJIFILM X-Pro1」を発表し、レンズ交換式「Xシリーズ」がスタートしました。Xシリーズは今年で誕生から6年経ちますが、固定式・交換式共に数々の進歩・発展をさせながら今日に至っております。

FUJIFILM X100 FUJIFILM X-Pro1

現時点のラインナップでは、我々がダブルフラッグシップと呼んでいる、ルポルタージュ、ドキュメンタリー分野に最適な「FUJIFILM X-Pro2」と、風景、人物から動体まで様々な被写体に対応する「FUJIFILM X-T2」という両機を代表にラインナップを形成し、画質やカメラデザインにこだわる方々から高い評価をいただいております。

FUJIFILM X-Pro2 FUJIFILM X-T2

そして、高画質の達成に最も大事な交換レンズもトータル24本のラインナップを取り揃えるまでに至っております。これで全ての写真家ユーザーのニーズに応えられるシステムがほぼ出来上がったのではないかと我々も自負しております。

~一回り大きいセンサーサイズと互角に戦える独自のセンサー開発で実現した高機能~

「Xシリーズ」のコンセプトとは?

丸6年経つ「Xシリーズ」ですが、コンセプトとしては、小型軽量で高い機動性を誇り、それでいて 画質はプロ使用に耐えられる高画質を実現するカメラ、ということになります。
これは「FUJIFILM X100」の登場以来ずっと守り続けている「Xシリーズ」のコンセプトです。

他メーカーの製品を見ていても、フィルムからデジタルになったことでレンズの光学設計やボディ構造などが変化し、同じ撮像面積を持つカメラ同士の比較ではカメラがどんどん大型化し、重くなっています。
我々は、普段から積極的に国内外の写真家に意見を聞きに行きますが、一様に期待されることは「機動力」です。フィルム時代に35mm判のフィルムカメラで撮影していた、ああいう感覚で写真が撮りたいというニーズが非常に多いという事が分かってきたんです。そういった観点から考えると、我々のカメラに採用すべきセンサーは、APS-Cサイズが一番ベストだという結論に至ったわけです。
しかし、ただ単にAPSサイズにしただけでは、やはりセンサーが小さくなって高感度性能だとか、大サイズプリント時の解像力において大きなセンサーに負けてしまう場合がある。それではプロユースのカメラとしては失格です。そこで我々は、レンズの性能を「絞り開放時から最大限に上げること」、そして、センサーも「X-Trans」という独自のカラーフィルター配列を持つものにして「ローパスフィルターを取り除きながらもモアレや偽色が出にくく、解像力も向上させる仕組みにすること」、の2つを併せて実現しました。
XシリーズがAPS-Cサイズのセンサーで、これだけの高画質を実現出来ている理由は、この「X-Transセンサー」と、その実力を最大限に発揮する「フジノンXマウントレンズ」、この2つの力によるところが非常に大きいのです。

~「Xシリーズ」開発を経て、プロ写真家の深い要求を取り入れた新たなコンセプトカメラの誕生~

「Xシリーズ」の進化と、新商品「FUJIFILM GFX 50S」誕生の理由とは?

上野 隆6年経ってユーザーが増えていきますと、特にベテランのプロの方々から、当然、より高い要求が寄せられるようになってきます。今までの話と多少矛盾しますが「多少機動性が落ちても良いので、Xシリーズの色再現を踏襲しつつ、より高い解像力を誇り、大サイズプリント、もしくは高精細な印刷に耐えられるカメラ、そういうのが欲しい」という声が出てきたわけです。
そこで我々は、Xシリーズとは別のコンセプトを持つ「もう1本の柱」を立てようと2年以上前から構想を練っていました。それで完成したのが、この「FUJIFILM GFX 50S」という新しいカメラです。簡単に言うと“機動力よりも圧倒的な高画質を目指す”というコンセプトで作られたカメラです。
もちろん、「Xシリーズ」同様ミラーレス構造ですので、そうは言っても、35mmのフルサイズとよばれるセンサーを搭載した一眼レフカメラとは同等以上の機動力を発揮できるサイズにしっかりとおさめているところが特長になっています。

FUJIFILM X100

ページトップへ